■許 鴻源・許 照信 編著『図解常用漢方方剤』1990,弊社刊より抜粋




葛根湯(傷寒論)かっこんとう

《組  成》
葛根8.0
麻黄4.0
桂枝3.0
芍薬3.0
大棗4.0
甘草2.0
乾生姜1.0



《処方解説》

(1) 有名な感冒薬である。
「傷寒論」および「金匱要略」に記述がある。
また感冒だけでなく、発熱や悪寒の有無にかかわらず、脈が浮で力があり、項背部が緊張し、炎症性充血、自下利、急性痙攣などの症状があるものには広く適応する。

(2) 葛根は、よく身体表面の血液循環を促進して熱を解するほか、腸管の収縮運動を増強し、排泄を容易にする。
麻黄と甘草を組み合わせると、咳嗽を癒し、身体表面の緊縮を緩和する。
芍薬は消化管の機能を増強するほか、強壮作用も有する。
甘草は肝臓の毒を解く。
大棗は滋潤作用がある。
生姜は血行を助ける。



《適応症および疾患》

(1) 感冒症候群の頭痛、感冒性下痢、流行性感冒。
(2) 風疹、突発性発疹、流行性耳下腺炎。
(3) 気管支炎、肺炎。
(4) 頭痛と肩こり、上半身の神経痛、四十腕、五十肩、むち打ち症。
(5) 各種の皮膚病、湿疹、蕁麻疹、?、疔。
(6) 各種眼疾患、角膜炎、麦粒腫、結膜炎、砂眼。
(7) 外耳道炎、中耳炎、鼻炎による鼻閉。
(8) 扁桃炎、アデノイド、嗄声。
(9) 髄膜炎。
(10) リンパ腺炎。
(11) 乳腺炎。
(12) 猩紅熱。
(13) てんかん。
(14) 慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア。
(15) 全身性エリテマトーデス。






《類似処方鑑別》

●桂枝加葛根湯
 肩甲部に強い痛みがあり、虚証で、汗のでるもの。
●麻黄湯
 発熱、喘息があり、脈は緊のもの。
●麻黄附子細辛湯
 感冒があり、虚証の冷え症で、脈が沈のもの。
●黄ィ湯
 下痢があり、太陽少陽の合併病で、腹痛と下痢をともなうもの。
●葛根黄連黄ィ湯
 発熱し、裏熱で、汗が出て、心脇下痞硬のあるもの。



《注  解》

 葛根湯は、日本では昔から愛用され多用されてきた薬方である。
現代医薬品にたとえれば、総合感冒薬のような薬味構成となっている。
主に上半身、ことに頭頸部に何らかの炎症性疾患があり、消炎鎮痛剤の投与対象となるような疾患は、ほとんど葛根湯の治療対象となると考えて大過ない。
ただし体質的に虚証のものには、桂枝湯や麻黄附子細辛湯を用いるべきである。

 日本人には、葛根湯の証を示すものが多いようで、そのためによく用いられてきたともいえる。
その効果は、ときに劇的で、わずか半日で流行性感冒の諸症状が消し飛んだりする。
漢方薬方の速効性とすばらしさを体験しうる薬方ともいえる。

 感冒様症状をともなったウイルス性下痢にも、葛根湯は奏効する。
「太陽と陽明の合病は、かならず自下利す、葛根湯は之を主る」(傷寒論巻第三、辨太陽病脈証並治第六)とある。
「傷寒論」の編者の観察の深さに感銘する一章である。






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